Man near info board at heathrow - Tobii Pro Glasses 3

事例

アイトラッキングを用いて旅客ターミナルの案内を改善する方法

ロンドン ヒースロー空港

カテゴリー詳細

  • 執筆者

    Tobii

  • 読了時間

    8 分

ヒースロー空港は乗客が第5ターミナルをどのように移動しているかを理解するためにアイトラッキングを活用しています。将来的には、より簡単かつ効率的に空港内を移動できるような案内を目指しています。 

Heathrow logo

シームレスな空港体験の実現 

飛行機はストレスの多い移動手段と言えるでしょう。手荷物のチェックイン、セキュリティチェック、搭乗ゲートを探したり…、これら全てを時間通りに行いながら、フライト時間に間に合わせる必要があります。このように乗客は考慮すべきことがたくさんあるため、直感的に行動できるように工夫することは、ストレスフリーに空港を利用してもらうためには基本条件です。さらにわかりやすい空港案内の恩恵を受けるのは、乗客だけではありません。140以上の国から、年間7,000万人以上の乗客がヒースロー空港を利用するため、ターミナル内の円滑な流れを維持することは、混雑を避け、フライトを予定通りに出発させるために極めて重要なのです。 

We often talk about the voice of the customer, but the view of the customer is equally important.
Wesley Lang – Research and Insight manager (Operations), Heathrow 

ヒースロー空港のビジョンは、世界最高の空港サービスを提供することであり、「ウェイ・ファインディング(Wayfinding)」は、それを実現するための重要な要素です。「ウェイ・ファインディング」は、端的に言うと、だれもが迷わずに自然に目的地にたどり着けるような仕組みのことです。ヒースロー空港では、物流の改善、混雑の緩和、そして乗客にとって最高のフライト体験を提供し続けるために、ウェイ・ファインディングに関する知見が必要とされていました。乗客にとって、空港ターミナルが「理解しやすいもの」であることが重要なのです。しかし、何が上手く機能していて、何かが上手く機能していないのかはどのようにして調べればよいのでしょうか?よく「お客様の声」と言いますが、「お客様の視点」も忘れてはいけません。 

背景 - 乗客の行動を理解する 

ヒースロー空港では、乗客は到着、出発、乗り継ぎの3つのいずれかを利用します。着陸後、乗客はまず手荷物受取所へと誘導され、その後、空港から移動するための移動手段へと案内されます。出発時には、チェックインカウンター、セキュリティチェックを経て、搭乗ゲートまで誘導されるでしょう。そして、乗り継ぎの場合には、乗客はできるだけ早く次の出発便へと案内されます。この3つの移動において、乗客をできるだけスムーズに移動させることが最も重要です。ターミナルが混雑すると、必然的に停滞や遅延が発生し、多くの乗客が不満を抱くことになります。世界で最も大きく、最も忙しい空港の1つであるヒースロー空港にとって、効果的なウェイ・ファインディングは欠かせないのです。 

ヒースロー空港のチームは、3つのそれぞれの移動について、何が上手く機能していて、何が上手くいっていないのかを見極めたいと考えていました。そのためには、乗客が躊躇したり、混乱したり、迷ったりする瞬間や、ボトルネックが発生しやすい場所を正確に特定する必要がありました。乗客の行動を観察したり、アンケートを実施するだけでは、得られる知見は限られています。ヒースロー空港では、人々がどのように空港を移動しているかを理解するために、アイトラッキングと定性的なデプスインタビューを併用することにしました。 

Tobii Pro Glasses 3 used at Heathrow airport

方法 ‐ アイトラッキングとデプスインタビュー 

ヒースロー空港は、ウェイ・ファインディングに関する課題を明らかにするために、トビーに協力を依頼しました。第5ターミナルを移動する際の乗客の視点を理解するために、調査チームはトビーのウェアラブルアイトラッカー「Tobii Pro グラス3」を使用し、「出発」「到着」「乗り換え」中の、例えば、搭乗ゲートやエレベーターを探したり、出国審査で適切なレーンを探しているときの乗客の視線を計測し、録画しました。 

アイトラッキングの専門家であるTobii 研究チームは、ヒースロー空港の社内チームと協力し、乗客の視線の動きや注意パターンに関する定性的な解釈を提供しました。調査には、108名の乗客に参加してもらい、「出発」「到着」「乗り継ぎ」などの移動中の様々な行動をアイトラッキングで取得しました。調査チームは、調査参加者の視線をリアルタイムで確認しながら追跡しながら、気になる行動や注意パターンがあれば、デプスインタビューの参考にするために、その都度メモを取っていきました。 

With eye tracking we can pinpoint exactly where passengers face confusion in their journeys and what signage is being ignored or misinterpreted.
Wesley Lang – Research and Insight manager (Operations), Heathrow

プロジェクトチームは一丸となって、決断や迷いが生じている重要な瞬間を特定することに成功しました。例えば、大きなホールに入るとき、エスカレーターを降りたとき、出口やルートが複数あるときなど、移動の節目で発生していました。この数秒間のアテンションデータは、何が迷いの原因となっているのか、どのような案内があれば迷いを解消してくれるのか、情報を提供するためのサイネージが気づかれていないのではないか、などを理解する上で非常に重要なものとなりました。また、過剰なサイネージが高い認知負荷と混乱を引き起こしていることも明らかになりました。 

Tobii Pro Glasses 3 used at Heathrow airport

アイトラッキングで取得した物理的なデータだけでは、全体像の半分しかわかりません。視線動画を調査参加者に見せ、デプスインタビューを行い、自分自身の視線行動の背景にある理由を説明してもらうことで初めて、アイトラッキングデータに意味を与えることができます。 

Tobii Pro Glasses 3 used at Heathrow airport

このアイトラッキング調査では、空港から移動するためのさまざまな交通手段へ、どのように乗客を案内するかについて、新しい視点を得ることができました。以前、乗客を適切なエレベーターへ誘導するのに苦労したヒースロー空港のチームは、アイトラッキングを利用してサイネージの視認性を分析しました。調査参加者が、サイネージに表示される情報に困惑している様子を見て、サイネージを最適化し、長時間の移動でイライラしがちな空港体験を改善しました。 

Tobii Pro Glasses 3 used at Heathrow airport

今後に向けて - 他ターミナルの最適化 

ヒースロー空港は、空港でのユーザーエクスペリエンスを向上させることを常に重視しています。そのため、チームは他のターミナルでも同様の分析を実施しようと意気込んでいます。ヒースロー空港の各ターミナルはそれぞれ異なり、ターミナル独特の経路や予期せぬ障害物やボトルネックもあります。ヒースロー空港のチームは、アイトラッキングによる調査をさらに進め、乗客の体験をより良いものにするための準備を整えています。 

カテゴリー詳細

  • 執筆者

    Tobii

  • 読了時間

    8 分

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