Girl in front of laptop online learning

教育分野の研究にも役立つアイトラッキング

アイトラッキングは、教育分野の研究研究でも使用されています。

ここでは、今最も最先端でエキサイティングな方法をいくつかご紹介します。

Academic Research Education Screen Based Eye Trackers

学習は、ある程度は本能的なものです。私たちがどのように情報を吸収し、同化し、脳に蓄積していくかは、長い間、科学的な興味の対象であり、学習中の脳の内部構造を解読することにキャリアを捧げている研究者たちもいます。脳波やその他の実験的手法によって、脳のパターンを読み取ることができましたが、アイトラッキングを使えば、侵襲的な手法に頼ることなく、さらに潜在的な洞察を得ることができるのです。私たちは、子供の認知負荷を観察し、学業優秀な生徒がどのように情報を処理するかを理解し、より正確に学習するための新しい指導方法を考案することも出来るでしょう。ここでは、学習プロセスの理解を深めるために、アイトラッキングが教育研究に利用されている代表的な方法をいくつかご紹介します。

共同注意の新しい方法

きっと赤ちゃんの頃は意識していなかったと思いますが、あなたのお母さんがリンゴを指差してあなたに言葉を発したとき、脳の中ではいろいろなことが起こります。まず音を受け取り、次にそのラベルと対象物の間の道筋をマッピングします。そして、その言葉が繰り返されるたびに、あなたの脳内でさらに強い関連付けがなされるわけですが、そのプロセスを助けるものがあります。あなたとお母さんがリンゴという共通のものを見ていることで、あなたはお母さんが人形やおもちゃの車、あるいは迷い込んだ猫のことを話しているのではないことがわかったのです。視線がリンゴに注がれていたので、あなたは簡単にその単語を覚えたのです。この現象は共同注視と呼ばれ、私たちが子供の頃に学ぶ方法の基本的な原理となります。

教育分野の研究者は以前からこの概念を知っていましたが、アイトラッキングを用いることで、幼児の学習プロセスに対する理解が大きく広がりました。言語習得やコミュニケーションの理解の初期段階において、共同注視の考え方がどの程度作用しているかを評価できるだけでなく、共同注視が必ずしも存在しない、あるいは著しく制限された状況でもうまく対処する方法を見つけることができるようになったのです。

教室にいる30人の子どもたちの注意を長く引きつけて勉強を教えることは十分に難しいことであり、それはリモート学習が普及する以前から続いています。コロナ禍で世界中の学校や学習機関は窓を閉め、新しいデジタル媒体を通じて授業を行うことを余儀なくされました。通常、先生が教室にいて生徒の注意は黒板に集まるものですが、生徒たちはビデオ通話を通じて、先生がどこを見ているか、どんな資料を参照して話しているかを想像しなければなりません。これは些細なことのように思えるかもしれませんが、人間の学習方法の重要な基礎を覆すものです。

教育分野の研究者は、アイトラッキングを利用して、リモート学習が進む時代にも、またいずれ教室に生徒が戻る時のためにも、学習方法と教材を再設計する方法を探しています。子供たちが自宅で学習を続ける一方で、教師の視線パターンを表示するプレゼンテーションツールやオンラインチュートリアルを適応させれば、共同注視のシナリオの不在を解消できる可能性があります。ビデオ授業では、教材ではなく先生に焦点を当てることで、共同注視を引き起こし、授業の効果を高めることができることが分かっています。アイトラッキングの洞察は、これらのコンセプトを現実の世界で想像し、検証するための道を切り開き続けているのです。

Teacher teaching math online

先生と授業を支援

リモート学習が普及する前から、アイトラッキングは生徒の学習環境を最適化するための評価方法として用いられてきました。約20年前に教師の「熟練者の視線」の研究が始まって以来、実際の教育現場でベテランの先生が視覚的な合図を読み取り、効果的な授業を行う際のリアルなデータを得る方法を提供してきました。

アイトラッキングが教育分野の研究に導入されて以来、これらの教育方法についてより詳細なイメージが描かれるようになりました。教師の視線パターンを分析することで、研究者は、教師がどのように潜在的な障害をスキャンし、問題を抱えている人をピックアップし、教室全体でコンテンツがどのように受け止められているかを追い続けているかを知ることができます。研究者のHalszka Jarodzka先生は、「このインタラクティブでダイナミックな環境では、教師の教室全体に対する視覚的認識が、教室運営や指導において重要な役割を果たす」(Jarodzka:2020)ことを伝えています。このような経験豊富な教師の注意力に関するアイトラッキングの研究は、新任の教育者がクラスの生徒の集中力と受容力を高め、能力を最大限に発揮する可能性を高めることに役立ちます。

Jarodzka先生はさらに、「モバイルアイトラッキングの研究が進めば、教師が教えるという行為において、どのように視覚が作用しているかを理解することができます」(Jarodzka:2020)と説明しています。これはエキサイティングな視点であり、教えるという行為そのものを分離し、調査し、理解する新しい心理学研究の分野を想像することができるのです。

読解力・理解力

教師は発達に関する研究者というわけではありませんが、歴史的に、子どもの学習に永続的な影響を与えうる読解力と理解力について複雑な判断をすることが期待されてきました。この判断が正確かつ早期になされれば、子どもはオーダーメイドの学習プログラムで教育を受けることができ、可能な限り高い読解力で学校を卒業できるようになります。一方、判断が遅れると、子どもたちは学習をスタートするチャンスを奪われてしまいます。

その問題を回避するソリューションの一つが、アイトラッキングによる読書パターンの測定です。従来は読解のスピードや容易さを理解するために子どもを注意深く観察する必要がありましたが、アイトラッキングを使用することで、認知負荷の高くなるエリア、ためらい、特定の難しい単語などを特定することができます。このように、文章を何度も読み返して困難を感じている子供と、1つの単語で苦労している子供、あるいはアセスメント中に気が散ってしまった子供をより正確に区別することができるようになりました。

TobiiProの新しいリーディング メトリクスTobiiPro ラボのような自動分析ツールなど、アイトラッキング技術は今後、この分野で必要とされるでしょう。

Girl reading on Tobii Pro Spectrum

読書支援ソフト

複雑な文章は、情報を整理し理解することが難しいと思うことは誰にでもあるはずです。専門用語、複雑な言い回し、業界用語など、すべてが非効率的な読書プロセスの一因となり、ある種の人は真の意味でインスピレーションを得ることができません。しかし、幸いなことに、科学論文の内容に水を差すことなく、いかにして理解しやすくするかを研究している研究者がいるのです。

これは、読者の視線を追跡し、認知的負荷を評価するプロセスです。ドイツ人工知能研究センターが開発したソフトウェアは、特定の単語や科学用語に高い負荷がかかると、それを迷いの瞬間とみなし、その用語の定義を親切かつ控えめな方法で紹介します。論文の読者は、画面を離れて自分で検索しなくても、その用語と文中の文脈を理解し、集中力を切らさずに読み進めることができます。

このソフトの開発チームが追求しているのは、読者の副次的な必要性を取り除き、情報そのものに集中できるようにするインテリジェント・リーディング・ソリューションである。彼らのアルゴリズムは、「迷いや不明」(Vadiraja, Dengel, Ishimaru: 2021)の時期を特定し、最適な手を差し伸べて正しい方向へ導くことを意味する。

このような読書の苦労を理解しリアルタイムに対応するアルゴリズムは、発達初期の読書教材や、学習障害のある方の支援など、さまざまな場面で活用できる可能性があります。

化学の概念を学ぶ学生を支援

初めて化学を詳しく学ぼうとすると、独特の壁にぶつかることがあります。他のいくつかの科学分野とは対照的に、化学は常にどこか、つかみにくいものなのです。なぜなら、化学では学ぶ現象についての実体験が限られるからです。化学をマスターするには、ミクロ、マクロ、シンボルの各レベルで理解する必要がであり、熟練した化学者ならこれらを同時に織り交ぜられるが、通常はなかなか難しいものです。

そのため、当然ながら現場ではビジュアライゼーションがブームになっています。静止画像や粗いアニメーションが主体で、化学の複雑な概念を伝えるのに、これらの視覚化された教材は今までよく使われてきました。アイトラッキングは、専門家と初心者が化学事象の視覚的表現をどのように吸収するかについての一般的な理解を広げ、専門家が一貫してその教材の使用を推奨しているにもかかわらず、初心者の学生はほとんど役に立たないという理由を、Jessica R. Vandenplasなどの研究者は、理解することができるようになったのです。Vandenplas氏の研究では、アイトラッキングのデータから、専門家が教材に取り組むときに見るものと、初心者が見るもののでは大きな違いがあることがわかりました。そこで、教師が説明を追加したところ視覚化された教材の異なる部分に注意を向けさせ、そのギャップを埋めることができたのです。

Chemistry molecule animation with eye tracking heat map

視覚さされた教材(アニメーション)を見るときの熟練者と初心者の視線の比較。アニメーション提供:VisChem プロジェクトProject

Herringtonらによる別の研究(2008)では、微視的な変数を操作して結果を観察するシミュレーションに取り組んでいる学生の視線データを分析しました。その結果、専門家の指導を受けられない学生は、与えられたリソースではなく、自分自身の限られた知識やアルゴリズム的な思考に頼ってしまうことが分かりました。このような状況において、初心者がどのように情報に取り組むかを調べることで彼らの学習速度を加速させるために指導方法を変更しました。また、教師は学生が科学を学ぶ際の教材を最適なものに変更することが出来るようになりました。

コードのティーチング

最新のソフトウェア開発技術に関して言えば、コードレビューはプロセスの重要な一部である。コードの品質保証は、間違いなく書くこと自体と同じくらい重要であり、早い段階でエラーを発見することで、後々数え切れないほどの費用と工数を節約することができます。そのため、新しいコードライターを可能な限り最善の方法でトレーニングすることが非常に重要なのです。

ドイツ・レーゲンスブルクの教育分野の研究者は、アイトラッカーを使用して、経験豊富なコーダーが比較的新しいコーダーと比較することでエラーを見つけ出す方法を視覚化することを始めています。その目的は、新人コーダーとベテランコーダーの間でレビュー技術に違いがあるかどうか、また、これらの洞察をどのように応用すれば、将来のコーダー世代により効果的なレビュー戦略を教えることができるかを知ることにあります。この研究の主席研究員であるNick Schorは、「上級者や熟練プログラマーは、エラー検出の場合に著しく優れたパフォーマンスを示し、アイトラッキングデータはより効率的なレビュー戦略を暗示する」と結論付けています(Schor et al: 2020)。

最近、コードレビューはソフトウェアシステムに助けられ、多くの重労働を取り除くことができるようになりましたが、それでもこのプロセスには多くの手作業と重要な場面での人間の判断が必要です。アイトラッキングは、これらの判断がどのようになされるのか、どのような情報がレビュアーに伝わるのか、そしてレビュアーがどのようにコードを単純にする方法を理論化しているのかを理解することを可能にします。技術革新が進む社会において、既存のコーディング手法に対する重要な洞察は、優位に立とうとする企業にとって非常に貴重なものとなるでしょう。

まとめ

個人差のある学習方法をより深く理解することは、研究者の想像を超える可能性を秘めているのです。現在、アイトラッキングは、被験者自身では説明できない、あるいは合理化できない思考プロセスを読み解いており、、学習行動の最も本能的で自然な部分の理解に役立っています。これは特に幼児の行動分析に当てはまります。アイトラッキングの洞察により、コミュニケーション発達の後期にならないと知り得ないような学習習慣に特権的にアクセスすることができるようになるのです。しかし、学習の旅路の始まりにある幼い子供であろうと、旅の終わりにある大人であろうと、アイトラッキングは学習中の心の舞台裏を覗くことができるのです。

アイトラッキングが教育読書研究の分野でどのように活用されているか、研究ページでご覧ください。

参考文献:

Vandenplas, J. R. (2008). Animations in chemistry learning: Effect of expertise and other characteristics. The Catholic University of America.

Jarodzka, H., Skuballa, I. & Gruber, H. (2021). Eye-Tracking in Educational Practice: Investigating Visual Perception Underlying Teaching and Learning in the Classroom. Educ Psychol Rev 33, 1–10.

Vadiraja, P. Dengel, A. Ishimaru, S. (2021). Text Summary Augmentation for Intelligent Reading Assistant. In Augmented Humans International Conference (AHs ’21), February 22–24, 2021, Rovaniemi, Finland. ACM, New York, NY, USA, 4 pages.

Hauser, Florian & Schreistter, Stefan & Reuter, Rebecca & Mottok, Jurgen & Gruber, Hans & Holmqvist, Kenneth & Schorr, Nick. (2020). Code Reviews in C++: Preliminary Results from an Eye Tracking Study. 1-5. 10.1145/3379156.3391980.