Tobii Pro Lab eye openness

(目の開閉度(Eye openness)-ノイズを減らし、新たなデータが取得可能に

瞼の動きを捉えることでアイトラッキングデータの品質が向上し、心理学、神経科学、臨床研究の発展につながります。

アイトラッキングで得られる眼球運動のデータは、人間の認知、行動、生理的状態をより理解するために使用されています。例えば、サッカードのピーク速度はメンタルワークロードを推測するために使用され(Bachurina & Arsalidou, 2022)、瞳孔サイズは覚醒度や注意の強さの変化を示すために使用されます(Strauch et al.)。しかし、眼球運動で得ている視覚情報は、4~6秒ごとに瞼を閉じること、つまり瞬きによって遮断されます。人間の脳は、このようなミニブラックアウトを無視できるような知覚メカニズムを発達させてきましたが、目の開閉度データで微細な瞼の動きも研究に取り入れることで、アイトラッキングデータの質が向上し、心理学、神経科学、臨床研究などの発展につながります。

目の開閉度 – 瞼の動きを測定する新たなデータ

眼球運動に種類があるように、瞼の運動にも様々な指標が存在します。瞼の動きとしては、自然に行っている瞬きが最もよく知られていますが、部分的な瞬き、サッカード中の瞼の動き、瞼の開閉時間なども測定することができます。トビーでは、研究者のために新しいアイトラッキングデータとして、上下の瞼の間に収まる最大の球体の直径を示す目の開閉度(Eye Openness)のデータを追加しました。このデータは様々な種類の瞬目を含む、瞼の動きを研究するための基本データになります。

瞼の動きから、認知や生理学的プロセスについて分かること

目の開閉度は、交通事故の最大の要因である運転中の眠気を検知するために利用されています。眠気を検出するために、瞼の動きを捉えることは安定的で意味のある情報の1つです。瞼の動きには、眠気の推定に使用できる指標がいくつかあります。(例:閉眼時間の割合(PERCLOS)、瞼の開閉時間・速度、瞬目回数)。

瞼の動きは、人間の心理と生理的な働きを理解するために使用されます。瞬目の速度は、精神的な作業負荷、生理的状態、およびモチベーションに強く影響されます (Biggs et al., 2015; Cori et al., 2019; Marquart et al., 2015)。例えば、長い瞬目は疲労や眠気を示し、短い瞬目は注意の持続やモチベーションの上昇に関係しています。様々な分野の研究者が、時間の知覚(Terhune et al., 2016)、創造的思考(Agnoli et al., 2022)、視覚的注意(Nakano et al., 2009)を理解するために瞬目を測定しています。

Cognitive process

眼球運動と瞼の動きは、神経解剖学的に関連しています。瞼の運動障害は、様々な臨床状態を示す指標として機能し、他の眼球運動から得られる理解を補完することができます。例えば、停留と追跡時の瞬目回数の増加は、アルツハイマーの進行の可能性が考えられます(Coubard, 2016)。目の開閉度が分かることで、ドライアイ疾患、眼瞼痙攣、眼瞼下垂症など、様々な眼瞼運動関連の機能不全を評価することが可能になります(Hamedani & Gold, 2017)。動物およびヒトの研究において、瞬目回数は線条体のドーパミンの度合いを知るためにも使用されています。目の開閉度は、パーキンソン病や統合失調症など、異常なドーパミンレベルによって特徴付けられる臨床状態を特定するために役立ちます(Jongkees & Colzato, 2016)。

アーチファクトを検出するための眼瞼測定

瞼の動きに関連したアーチファクトは、アイトラッキングデータに大きな影響があります。アイトラッキングの分野では、瞬目を検出するための様々な方法があります。しかし、一部の手法では、欠損したデータ値やノイズを瞬目として解釈するため、瞬目の検出が不正確になり、解析に不要なデータが含まれる可能性があります。例えば、瞬目を正しく検出したり、もしくは除くなどしないと、瞳孔径の測定が正しく計測されない(過小評価される)可能性があります。 目の開閉度データによって、瞬目を正確に推定することができ、正しい瞳孔径を測定することが可能になりました。

瞼の動きもサッカードに影響を及ぼします。眼球が回転する際に起こる弾道を描くような瞼の運動があります。 瞬目によって妨げられたサッカードは、ピーク速度が低下し、時間が2倍から3倍に増加します(Goossens & Van Opstal, 2000)。いくつかの病状(例えば、ハンチントン病)では、病気のステージと進行を示すために、正確なサッカードの検出は非常に重要です(Miranda et al.)。目の開閉度データは、正確な瞼の動きの検出することによって、サッカードの正確さを確認することに役立ちます。

瞼の動きは、脳波(EEG)データにおいてもアーチファクトの原因となります。瞬目、サッカード中およびサッカード後の瞼の動きから生じるアーチファクトによってEEGのレコーディングにノイズが生じます。瞼の動きに関係するアーチファクトは、角膜の上を滑り落ちる際に、正に帯電した角膜と額の間の抵抗の変化に由来します(Plöchl et al.、2012)。目の開閉度データによる瞼の動きの検出は、特に眼電図(EOG)測定が利用できない場面で、瞼によるアーチファクトの特定が容易になります。

Tobii Pro Spectrum

重要なポイント

目の開閉度が分かることで、アイトラッキング実験の視線データの質の向上につながります。

ここでは、目の開閉度の主な活用方法をご紹介します。

  • ドライバーの眠気推定 (PERCLOS, 瞬目, 瞼の開閉時間/速度) 
  • 人間の心理、生理、認知プロセスに関する研究
  • 瞼の動きに関連した機能不全の評価
  • 瞳孔径およびサッカード測定時の瞬目によるアーチファクトの検出
  • 脳波データにおける眼瞼アーチファクトの検出が容易(特にEOG測定が不可能な場合)

目の開閉度データの技術的なレポート(英語)の準備が整い次第、お客様にご案内します。ご希望の方は、下記よりご登録ください。

登録フォーム

目の開閉度のシグナルは、現在、ファームウェア 2.6.1 の Tobii Pro スペクラムアイトラッカーで利用可能です。すべてのTobii Pro SDK(バージョン1.10)の言語バインディングと、対応している全OSバージョンで目の開閉度のデータが取得できます。
最新ファームウェアを搭載したスペクトラムでは、Tobii Pro ラボ(バージョン1.194)を使用して、データのレコーディング、リプレイ時でのデータの可視化、Rawデータの出力、および目の開閉度に基づくメトリクスの出力が可能です。

参考文献

Agnoli, S., Mastria, S., Zanon, M., & Corazza, G. E. (2022). Dopamine supports idea originality: The role of spontaneous eye blink rate on divergent thinking. Psychological Research.

Bachurina, V., & Arsalidou, M. (2022). Multiple levels of mental attentional demand modulate peak saccade velocity and blink rate. Heliyon, 8(1).

Biggs, A. T., Adamo, S. H., & Mitroff, S. R. (2015). Mo’ Money, Mo’ Problems: Monetary Motivation Can Exacerbate the Attentional Blink. Perception, 44(4), 410–422.

Cori, J. M., Anderson, C., Shekari Soleimanloo, S., Jackson, M. L., & Howard, M. E. (2019). Narrative review: Do spontaneous eye blink parameters provide a useful assessment of state drowsiness? Sleep Medicine Reviews, 45, 95–104.

Coubard, O. A. (2016). What do we know about eye movements in Alzheimer’s disease? The past 37 years and future directions. Biomarkers in Medicine, 10(7), 677–680.

Goossens, H. h. l. m., & Van Opstal, A. J. (2000). Blink-Perturbed Saccades in Monkey. I. Behavioral Analysis. Journal of Neurophysiology, 83(6), 3411–3429.

Hamedani, A. G., & Gold, D. R. (2017). Eyelid Dysfunction in Neurodegenerative, Neurogenetic, and Neurometabolic Disease. Frontiers in Neurology, 8.

Jongkees, B. J., & Colzato, L. S. (2016). Spontaneous eye blink rate as predictor of dopamine-related cognitive function—A review. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 71, 58–82.

Marquart, G., Cabrall, C., & de Winter, J. (2015). Review of Eye-related Measures of Drivers’ Mental Workload. Procedia Manufacturing, 3, 2854–2861.

Miranda, Â., Lavrador, R., Júlio, F., Januário, C., Castelo-Branco, M., & Caetano, G. (2016). Classification of Huntington’s disease stage with support vector machines: A study on oculomotor performance. Behavior Research Methods, 48(4), 1667–1677.

Nakano, T., Yamamoto, Y., Kitajo, K., Takahashi, T., & Kitazawa, S. (2009). Synchronization of spontaneous eyeblinks while viewing video stories. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 276(1673), 3635–3644.

Plöchl, M., Ossandón, J., & König, P. (2012). Combining EEG and eye tracking: Identification, characterization, and correction of eye movement artifacts in electroencephalographic data. Frontiers in Human Neuroscience, 6.

Strauch, C., Wang, C.-A., Einhäuser, W., Stigchel, S. V. der, & Naber, M. (2022). Pupillometry as an integrated readout of distinct attentional networks. Trends in Neurosciences, 0(0).

Terhune, D. B., Sullivan, J. G., & Simola, J. M. (2016). Time dilates after spontaneous blinking. Current Biology, 26(11), R459–R460.