安全運転支援技術に活用できるアイトラッキング

アウディは、無自覚の運転における現象を更に明らかにするための研究において、Tobii Proのウェアラブル型アイトラッカーを使用しています。ウェアラブル型アイトラッカーは、運転者 が覚えていないような運転中の行動や出来事の洞察を行う事が可能です。アイトラッキング データは無自覚の運転のある段階における注視パターンの大きな変化を明示し、ある現象に結 びつく状況や外的な要素を特定するのに役立ちます。

背景

無自覚の運転(Driving without awareness ‒DWA)とは、すなわち回りを取り巻く道路状況に対して少ししか、あるいは全く自覚していない運転感覚を言います。この現象についての先行研究は僅かで、しばしば高速道路の長時間運転に焦点を当てたものであり、実際の運転経験とは異なるシミュレーターを 使ったものや、運転者の経験について直接ドライバーに質問するような方法でした。

Attitudes は、スペインの Audi によって開始された「会社の社会的責任プログラム 」です。運転中の態度や人間行動の研究に焦点を当て、プログラムは より大量の詳細なこれらの現象の調査に着手しました。

私たちは、アイトラッキングにより、運転者が無自覚に運転している状態を解明し、リアルタイムで実際の運転手の行動を理解することができる。

Hildebrand Salvat,, Partner and Technical Director at Gabinet Ceres, SL

手段と方法

調査は 2 段階に分けて行われました。第一のフェーズでは従来から行われてきた電話によるインタビューを含む伝統的なアンケート調査を、DWA の広範な諸局 面に取り組み、現象を定量化するためにスペインのドライバー代表する 2000名に対して行いました。第二フェーズでは、いくつかの定義された仮説をテストし、 多くの詳細な無自覚の運転エピソードを調査するために、綿密なインタビューと一緒に視線追跡の観察が行われました。

いくつかのテストされた仮説とは

■ ドライバーがあるアイデアや考えに集中していると、半ば無自覚の運転はより多く起こる
■ 慣れ親しんでいるルートは、変化しない視覚的刺激に対する少ない注意を促す
■ 沢山の視覚的刺激の存在は無自覚の運転の出現可能性を減少させる
■ ドライバーは運転の行為に関係のある刺激よりも、関係しない刺激に対してより不注意である

アイトラッキングによる観察

13 人の経験を積んだドライバー(全て同じ産業領域の労働者で 25 ~ 60 歳の年齢)は異なる目的で2つの異なるテストを通じて観察されました。最初のテストで、 テスト参加者であるドライバーはレース用のサーキットを運転し、研究者はサーキット 1 周ごとの独自の特徴と同じ制御されたトラフィックコンディション (交通量、刺激、学習効果その他)の下でのドライバー間の比較を行う事によって仮説をテストする事が出来ました。

第 2 のテストでは、殆どのドライバーが仕事で行き来している普通の大都市間の道路を運転。このテストは普通に起こり現実の運転状況にもっと一般化できる結論を引き出せるように、現実生活に近い設定で、半ば無自覚の運転を分析する事を研究者に可能にするものでした。

この両方のテストを通じて、テスト参加者は彼らの眼球運動を記録し研究者が個々のドライバーの視野にある何が彼らの注意を引いたかを明らかにするため に Tobii Proのウェアラブル型アイトラッカーを装着してもらいました。運転が終わるたびに、調査の目的を知らされていないドライバーには詳細なインタビューが行 われた。ドライバーは、「 道路で見ていた何を覚えているか?」、「 何を考えていたか?」、「 いつもは何を(どう)しているか?」を尋ねました。

アイトラッキングの分析とインタビューのデータ

アイトラッキングデータを分析し、ドライバーからのインタビューのフィードバックを得て、そのデータをマッピングする事によって、研究者は DWA(無自覚の運転)現象を洞 察することが可能になりました。仮説を考査するために全行程のビデオから問題となる視線の部分を表示し分析した。ドライバーの見るパターンや何をドライバーは実際に見て、またどういう順番で見ているのかを画像的に可視化して明らかにし説明するためにヒートマップやゲイズプロットといった TobiiStudioソフトウエ アの分析機能が利用されました。

結果

この調査によって DWA は広範に行われており、それは経験や運転習慣の 1 つの結果であることが分かりました。調査の中で、たった 25% のドライバーが決して 無自覚の運転を経験したことがないと答え、5% 以上の参加者がいつものようにそのような状況を経験していると報告しています。また調査では、このような形 で運転するドライバーは、概して経験を積んだドライバーで、頻繁に運転しており仕事や学校へ行くのにいつも同じルートを通っています。

さらに調査によって、いつもこのように運転していると言ったドライバーの中にも、殆ど意識的に運転していると言ったドライバーの中にも DWAの証拠を発見した。それゆえに全てのドライバーがこのように運転していることに気づいているわけではないと仮定できます。

無自覚の運転は安全な運転と言えるのか?

 

調査の結論は、DWA は運転という行為への注意を減少させる、しかし必ずしも一般的な安全確保や路上の安全を減少させるわけではない。万一危険を察知する何かが起これば無自覚の運転は消え失せ、殆どのドライバーは殆どの場合普通に振舞う事ができるでしょう。研究者は反応時間への影響をテストする事が出来なかったが、その増加は非常に小さいだろうと考えています。無自覚の運転は大したことでは無いと考える事はできます。しかしその運転が制限速度を超えた運転のような他のリスクと一緒になると事故に対する影響は増加するかもしれません。

注視パターンの有意な変化

意識的な運転では、ドライバーの注視点は殆ど一定しており、あるポイントから他のポイントへ視線を移すのに大きく飛ぶことなく適切な視覚的刺激を視認 する事が出来ます。アイトラッキングデータは無自覚の運転の状態での注視パターンに有意な変化を示しました。停留点の数の増加、見ている範囲の拡大、より素 早い眼球の動きは、ドライバーが道路上の特定の場所を注視し続けたままであったにも関わらず出現しました。無自覚に運転している時に、研究者がアクティブ・ レーダー・ビジョンと呼んでいるところの見方― 領域をカバーし、運転に関係のあるかもしれない視覚刺激の発生の可能性に対して注意を怠らない状態をド ライバーは保っていました。

Gaze plots illustrating attention pattern while driving a car.

アイトラッキングデータはまた、無自覚の運転時は、関係する方向にあるポイントへの注意が減少すること、しかしドライバーは潜在的なリスクを探してい ることを示しました。ドライバーたちは変化しない 、また予測できるすでに知っている刺激には注意が減少。彼らは適切にうまく運転したが、やったことを殆ど覚えていませんでした。何かをチェックする行動、例えば新しい速度制限の標識を見た時にスピードメータをチェックするような行動は減少しました。

注視パターンの有意な変化

調査は、無自覚の運転DWAが他のタスクと組み合わせて運転している時により多く起こりやすいことが明らかになりました。普通の大都市間の道路で無自覚の運転の局面を経験した全てのドライバーは、その時運転に関係ない別のことを考えていたか注意を向けていたと答えています。例えばその日の仕事のスケジュールや、決めなければいけない事などとなります。

運転ルートへの慣れ

DWA はより慣れたルートで起こりやすい、そこでは運転者はよりリラックスして運転でき、道路沿いにある視覚的刺激に対する注意も少なくなるとテスト参加者は言っています。

アイトラッキングデータによると、慣れた道路を運転している時は、殆どのドライバーは常に変化する刺激に注意を向けたが、変わらない刺激には注意を少 ししか向けなかった。ルートへの慣れは、ドライバーの見てカバーする領域および視線の停留の数と、視線の動き / ジャンプの両方を減少させた。左の画像にあるゲイズプロット(注視点の順番と長さを示す)とヒートマップ(最も注視が集中した個所を色温度で示す)は、レースのサーキットコースを始めて運転する時と、コースのレイアウトを覚えてしまってからの注視パターンの違いを表してます。

路上の視覚刺激の数

路上の少ない視覚的刺激は DWA の発生を促進するまた別のファクターのようです。それはハイウェイやその他の単調な路上の少ない視覚的刺激によって、より起こるようです。

アイトラッキングデータによると、ドライバーが路上のある視覚的な刺激への注意を減少させる瞬間(時間 )と、視覚的刺激の数が少ないセクションの間には相関関係がある事を示しています。視覚的刺激の欠如は必ずしも DWA を意味しません。しかし良く知らないルートで多くの視覚的刺激があるときは運転が無自覚になる事は非常に少ない。

運転に関係する / 関係しない視覚的刺激

調査は 2 段階に分けて行われました。第一のフェーズでは従来から行われてきた電話によるインタビューを含む伝統的なアンケート調査を、DWA の広範な諸局面に取り組み、現象を定量化するためにスペインのドライバー代表する200 名に対して行いました。第二フェーズでは、いくつかの定義された仮説をテストし、 多くの詳細な無自覚の運転エピソードを調査するために、綿密なインタビューと一緒に視線追跡の観察が行われました。

認知リソースの節約

ドライバーは彼らが見たものあるいは運転中に起こった事を全ては覚えていないという事実は、認知的なリソースの節約の役割を反映しています。その時彼らは注意を払っていたけれども、それが必要だと見なされないために、この情報を後で思い出せるように貯めておく事にリソースを割り当ていません。しかしなが ら彼らは人目を引く、しかし運転には関係ない、運転以外の、あるいは他のドライバーがした、いくらかの事を覚えているかもしれない。これは無自覚の運転はドライバーが知っている繰り返される行動をコントロールする事だけに限られているという考えを補強するものです。